木曜日, 5月 04, 2006

彼女の明るい振る舞いの暗い理由

高校生のとき、だからもう25年くらい前のことか
ある同い年の違う高校の女の子とよく会っていた。

随分とたくさん会って、見かけも話かたも可愛い女の子で
会って話しているだけで、楽しかったのだが、
別にそれ以上、近づこうという努力を僕はしなかった。

彼女は僕に会うための時間をよく作ってくれたもの
だと思うが、彼女には友人も多く、社交的で人付き合いが
良いので、僕がその一人に過ぎないとわかっていたし、
それを何とか自分だけの彼女になってほしいという気持ちも
それを行動に移すほど強くもつこともなかった。

彼女はほとんど一人でじっとしていることはなく、
行動的で、よく色々な人とあっているようだった。

大学生になって、彼女と会わなくなった。
お互いなんとなくそうなっただけで深い理由なんてない。

ただ、彼女はともかく明るくて行動的で何か、
僕は気おくれしていたようなところがあったのだと
思う。

大学生になって、確か一年半くらいたって
からだと思う。

彼女から急に電話がかかってきた。
久しぶりに会おうということだ。

あれは確か夏だった。

バーに入ってトロピカルカクテルを頼んだら、
一つのグラスに2本のストローが刺さっていたけど
それを交互に自然に飲むほど親しくもないような、
それでいながら、会うたびに随分色々な話をした
ものだなあと不思議な気持ちになっていたことを
覚えている。

そして話の途中で彼女はこういった。

彼女「私は、いつも人に会っていないと駄目なの」

私「一人だとつまらないから?」

彼女「一人でいると気が狂ってしまうんじゃないかと不安になるの」

私「エッ.......」

話を聴いてみると、彼女の父親は芸術家で大学教授で、
(そこまでは既に知っていたが)親戚にも芸術家が多い家系だ
ということ。そして、親戚に、精神異常になる人がとても多いこと。
それで自分もそうなるのではないかと不安に思っていること。

それで、人にあって話をしたり、いつも何かをしていたりしないと、
自分もおかしくなってしまうのではないかととても不安になること。
そんなことをきいた。実際は彼女はもっと上手に説明してくれたの
だろうけど。

僕は相変わらず鈍感で彼女が単純に明るくて行動的な
だけだと思い続けていた。何もわかっていなかった。

でも、本当にその理由だけで、彼女があれだけ明るく
行動的に振舞うことができたのかも、僕にはわからない。

はっきりわかるのは僕はそんなに人の心をよくわかって
ないということことだった。

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