村上春樹の短編集
「中国行きのスローボート」の中に
「午後の最後の芝生」という人気のある短編がある。
私もこの短編好きなのです。
なぜだか。
とても好きなガールフレンドに
「あなたが私を本当に必要としているとはどうしても思えないの」
と、たしかそんなようなことを言われて、別れてしまう主人公。
真面目に、きちんと生きようとして、それが芝生刈のアルバイトにも
反映されて、しっかりした仕事ぶりに、感謝されるのに、心は何か
空ろな主人公。
細かい描写が、主人公がどれだけ感受性豊かに自分の周囲を
捕らえているかを表現しているようにも感じさせる。
その主人公は夏休みを一緒に過ごすはずだった彼女を
失ってとても悲しいのに、その彼女に、キミが必要だとは
結局言わなかったまま別れて、仕方なしに最後の芝刈りの
バイトにでかける。
目の前にとても大切なものがあるのに、まるで大きな水槽越しに
それを眺めているように。
「やれやれ」(村上春樹がよく主人公にこのセリフをいわせていたような)
この短編小説を何故そんなに面白く感じるのか説明できないことが
ここまで書いてわかった。
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